劣通信環境下における通信技術DTNに関する研究

蓄積搬送型通信に関する研究

蓄積搬送型通信の性能限界の解明

ノードの移動特性に応じた蓄積搬送型通信の性能を理論的に解明する.これまで,すべてのノードが情報を共有 するまでの時間分布が漸近的にべき乗則にしたがうことを明らかにした.また,ノード数の増加とともに情報共有時間の平均値や分散が発散する状態から有限の 値をとる状態へある種の相転移が起こること,またべき指数が大きくなることを明らかにした.これらの結果は,一般には情報共有に長い時間がかかる可能性は 無視しえないが,ノード数が十分多くなると,情報共有時間が短くなると同時にばらつきも小さくなり,情報共有が効率よく進むことを意味する.したがって, 大勢の被災者や大量のセンサが存在する現実的な状況においては,蓄積搬送型通信は通信手段として有効であることを,理論的な観点から明らかにしたと言え る.

<主な外部発表成果>

A. Fujihara and H. Miwa, “Scaling relations of data gathering times in an epidemically data sharing system with opportunistically communicating mobile sensors,” Intelligent Networking, Collaborative Systems and Applications, pp.193-206, 2010. https://www.springer.com/engineering/mathematical/book/978-3-642-16792-8

A. Fujihara, H. Miwa, “Relaxation times of information collections in an epidemically information-sharing process with randomly moving sensors,” Proc. International Conference on Intelligent Networking and Collaborative Systems, pp.360-365, Barcelona, Spain, Nov. 4-6, 2009.

A. Fujihara, H. Miwa, “Efficiency analysis on an information-sharing process with randomly-moving mobile sensors,” Proc. SAINT 2008, pp.241-244, Turku, Finland, Jul. 29, 2008.

 

蓄積搬送型通信の効率化

ノードの移動特性を考慮することで,宛先ノードへの到達可能性が高く,かつ到達時間も短いことが期待できるノードを選択してコピーを送ることにより,リソース使用量を抑制しつつ,高い到達確率を実現する方式について研究している.ま た,災害時に残存した通信ネットワークと車車間通信を組み合わせた通信方式(Virtual Segment方式)の高度化も行っている.開発した道路網トポロジ推定システムによって推定した,東日本大震災直後における実際の道路網トポロジを利用 してシミュレーションを行った結果,東日本大震災時に,この通信方式を利用したシステムが使われた場合の情報流通効果が定量的に評価でき,有効性を示すこ とができた.

<主な外部発表成果>

Y. Kimura, H. Tsuji, H. Miwa, “Performance Evaluation of Virtual Segment Method based on Actual Road Network Topology at the time of the Great East Japan Earthquake,”  Proc. INCoS2012, Bucharest, Romania, Sep.18-21, 2012.

A. Fujihara, S. Ono, H. Miwa, “Homesick Levy Walk and Optimal Forwarding Criterion of Utility-based Routing under Sequential Encounters,” Internet of Things and Inter-cooperative Computational Technologies for Collective Intelligence, Springer, 2012. (To be published)

鶴, 内田, 滝根, 永田, 松田, 巳波, 山村, “DTN 技術の現状と展望,” 通信ソサイエティマガジン, No.16, pp.57-68, 2011. https://www.ieice.org/~cs-edit/magazine/hp/prizewinner/prize_2012.pdf

 

災害時における避難誘導に関する研究

災害時における避難誘導に関する研究

蓄積搬送型通信による情報伝搬を利用した最速避難問題に対する分散協調避難誘導アルゴリズムの設計を行っている.これまでに,東日本大震災直後の仙台市の推定道路網トポロジを利用してシミュレーションによって評価し,有効性を示すことができた.現在,アルゴリズムの高度化と,実用化に向け,スマートフォンアプリを含むシステムの研究開発を進めている.

<主な外部発表成果>

巳波弘佳,藤原明広,下斗米貴之,”劣通信環境における情報収集とその構造推定への応用,” 電子情報通信学会論文誌B,J93-B, 1575-1584, 2010.

A. Fujihara, H. Miwa, “Effect of Traffic Volume in Real-time Disaster Evacuation Guidance Using Opportunistic Communications,”  Proc. INCoS2012, Bucharest, Romania, Sep.18-21, 2012.

A. Fujihara, H. Miwa, “Real-time Disaster Evacuation Guidance Using Opportunistic Communications,” Proc. SAINT2012, Izmir, Turkey, Jul.16-20, 2012.

 

避難誘導アプリの開発

災害時には,犠牲者を減らすためにも,避難所への迅速な避難誘導が重要である.しかし,災害時に様々な場所にいる人々が各々どのような 経路で避難したらよいかわかっているとは考えにくい.したがって,交通網の状況と避難所の位置,被災者数に応じて迅速に避難経路を決定しナビゲーションを するシステムが必要である.そのために,災害時に通常の通信が行えない状況である時,携帯端末同士の近距離通信機能(特にBluetooth)を利用して 蓄積搬送型通信を行うことにより,被災状況や混雑状況に関する情報共有を図りつつ,適切な避難場所への避難誘導を行うシステムを研究開発している.

<主な外部発表成果>

ITS Japan 人と物の移動に役立つITS防災アプリアワード企画賞「すれちがい通信を利用したリアルタイム災害避難ナビ」https://www.its-jp.org/app-contest2012/result/